クラウドと物理。どちらを選ぶべきか?

クラウドと物理。どちらを選ぶべきか?

クラウドサービス(ここでは、パブリッククラウドサービス)とコロケーションサービスなどの物理環境。両者は、それぞれのメリットとデメリットがあり、それによる向き不向きがあります。
「柔軟性」「パフォーマンス」「コスト」「セキュリティ/可用性」。4つの観点からクラウドサービスと物理環境について比較し、それぞれの特徴と向き不向きを明らかにします。
(2011年9月 掲載開始)

「柔軟性」「パフォーマンス」「コスト」「セキュリティ/可用性」

柔軟性

まずは、柔軟性について考えます。
柔軟性には、大きく「導入のスピード」と「リソースの柔軟性」の2つがあります。

「導入スピード」とは、申込を行ってから実際に利用できるまでの期間の長さです。これまでのシステムに比べて短期間に利用できるのがクラウドサービスの大きな特徴です。また、「リソースの柔軟性」も重要なポイントになります。「すぐはじめられる」だけではなく、「すぐやめられる」。これにより、インフラコストを「固定費」から「変動費」として扱うことができることが企業にとってのクラウドサービスの大きなメリットになります。

柔軟性の観点からはクラウドにメリットあり

コストが変動費であることが重要な企業・サービスにとっては、クラウドサービスが向いています。つまり、リソースを使うとき、使わないときが大きく変動するシステム、急激なリソース増強が発生するシステムです。一般に、Web系のサービスでは、このような変動が激しい傾向が強いため、特にWeb系のシステムでは、近年クラウドサービスが浸透してきています。

  クラウドサービス
(パブリッククラウド)
物理環境
柔軟性 導入スピード
リソース柔軟性

なお、「どのような場合でも、固定費より変動費の方が優れているというわけではない」ということには、注意が必要です。企業でいえば、コストセンターにあたる部門のシステム、例えば、情報システム部門管轄の業務システムなどは、一般に、「毎月コストが変動し、来月のコストがいくらになるかわからない」というような費用形態では利用が困難でしょう。付け加えれば、たとえ同じWeb系のシステムでも、トラフィックが増えれば比例してその分だけ売上が増えるようなWebサイト(例:ゲームサイトなど)では、変動費が向いていますが、トラフィックの増加がダイレクトには売上に影響しないサイト(企業のコーポレートサイトなど)では、固定費の方が望ましいと考えられます。

パフォーマンス

次は、パフォーマンスについてです。パフォーマンスには、大きく「サーバ」「ネットワーク」の2つのパフォーマンスがあります。

「サーバ」のパフォーマンスでは、まず単純に「CPUパワー」に関する部分。これに関しては、一般にはやはりクラウドに比べると物理サーバに分があります。理由は、クラウドサービスでは、通常1つのサーバ、1つの物理CPUを多数のユーザでシェアするためです。このため、単純に遅い可能性があるという以外に、「いつパフォーマンスが低下するかわからない」というパフォーマンスの安定性に対する不安がクラウドには常に付きまといます。
次に、気になるのが「ディスクパフォーマンス」の部分です。クラウドサービスでは、ディスクI/Oが不安とよく言われます。通常サーバだけではなく、ストレージに関しても多数のユーザでシェアしていますので、特にデータベースなどで、ディスクI/Oがボトルネックになる事例が報告されています。

サーバに対して、「ネットワーク」のパフォーマンスもあります。クラウドサービスでは、ネットワークの遅延時間が大きい場合があるということはよく知られています。遅延時間の大きさは、トラフィックのスループットにダイレクトに影響してきます。また、クラウド基盤が海外にあるような場合には、遅延の大きさはより顕著になってきます。

サーバ単体のパフォーマンスは物理環境が優れている

一般に、サーバ単体のパフォーマンスの高さやパフォーマンスの安定性が求められるようなシステムには、パブリッククラウドより物理環境の方が適しているといえるでしょう。

  クラウドサービス
(パブリッククラウド)
物理環境
パフォーマンス サーバ
ネットワーク

コスト

3つ目はコストについてです。
クラウドサービスは、特に小規模な場合は高いコストパフォーマンスを有しています。ただし、大規模になってくると、低コストとはならない場合があるので、注意が必要です。多くのパブリッククラウドサービスでは、料金体系は、「従量制」となっています。従量制の場合、小規模の場合は、コストが抑えられます。しかし、規模が多くなってくるとサーバ数量やトラフィック量に完全に比例してコストが増加していきますので、大規模なシステムでは高コストになりがちです。
一方、物理環境では、小規模なシステムでもある程度のコストがかかります。しかし、クラウドサービスとは違ってシステム規模とコストの関係がなだらかな直線になるのが普通です。

コスト

つまり、物理環境(一般的なシステム)では、規模が拡大すると単位当たりの単価が下がっていきますが、クラウドサービスでは、単位当りの単価は規模によって変化がないというのが一つのポイントになります。
このため、小規模システムではクラウドサービスが有利となりますが、大規模なシステムになってくるとコストが逆転することがあります。

システム規模によって最適コストが変化

  クラウドサービス
(パブリッククラウド)
物理環境
コスト 小規模
大規模

セキュリティ/可用性

他に気になる要素は、「セキュリティ」と「可用性」の部分でしょう。

セキュリティ

多くの調査でクラウドサービスの導入を躊躇する理由として、「セキュリティの不安」があげられています。不安の一つは、自社以外の場所、特に「自社の重要なデータを海外に出してよいのか」という点です。よく問題とされるのが、米国で成立した「愛国者法」と呼ばれる法律です。この法律によると、米国内にあるサーバのデータを閲覧する権利を捜査当局が持っています。

  クラウドサービス
(パブリッククラウド)
物理環境
セキュリティ △~○

また、クラウドサービスでは、ファイアウォールが導入されていない、またはオプションとなっているシステムも多く、標準ではネットワークのセキュリティは低くなっています。ただ、OSそのもののセキュリティについては、クラウドとこれまでのシステムに大きな差はなく、パッチを充てるなどのこれまでと同様な(クラウドに特化しない)対策が必要となるでしょう。

物理環境では、まずデータの物理的な場所に対する不安感はなくなります。その他のセキュリティについては、セキュリティの強さは設計次第といえるでしょう。ファイアウォールやUTM装置の導入、その他セキュリティソリューションの導入などにより、物理的なシステムでは、セキュリティ対策をきちんと施すことにより、セキュリティを高めることが可能です。一方、こういった対策を行わなければ、物理的なシステムでもクラウドと変わらない、場合によっては、クラウド以下のセキュリティ強度になることもあります。

可用性

可用性、つまりどれくらい安定してシステムが稼働できるかという点に関しても気になるところでしょう。特に、適用するシステムによっては、ダウンが致命的になる場合もあります。

  クラウドサービス
(パブリッククラウド)
物理環境
可用性 ×~○

クラウドサービスでは、システムを共通化している分ある程度の冗長性を持ったシステム構成をとっているサービスが多くなっています。ただ、サービスによっては、一度サーバがダウンするとサーバ上のデータがすべて消失するものもあります。また、特に大規模なクラウドサービスでは、システム構成が複雑になってきており、一度大規模障害になると、数時間から数日間復旧にかかる事例もあります。そのため、高い可用性が求められるエンタープライズ系のシステムには、クラウドサービスはまだあまり浸透していないのが現状です。
一方、物理環境では、システムの設計により大きく可用性は異なります。サーバ単体では、可用性は低くなりますが、サーバ、ネットワーク機器、ストレージなど、それぞれの冗長化度を上げていくことにより、パブリッククラウド以上に可用性を上げることが可能です。また、システムが設置されるインフラ環境(電力、温度などの安定性)でも可用性は左右されます。

まとめ

以上のように、パブリッククラウドサービスと物理環境では、それぞれの特徴、メリット/デメリットがあります。
よって、利用したいシステムの要件を項目ごとに見極めて最適なサービス選択を検討することが必要になってきます。

  クラウドサービス
(パブリッククラウド)
物理環境
柔軟性 導入スピード
リソース柔軟性
パフォーマンス サーバ
ネットワーク
コスト 小規模
大規模
セキュリティ △~○
可用性 ×~○

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